「習い事に行きたがらないんです。どう声をかければいいのか、正直わからなくて」
保護者面談で、こんな相談を何度も受けてきました。
お気持ち、よくわかります。
教育系のライターをしている鈴木理恵と申します。
小学校教員から出版社の編集を経て、いまは現場と書き手の両側から、子育てや習い事のことを綴っています。
今回は、教員時代に出会った3人のお子さんのケースをご紹介します。
そして、3人に共通していた1つのサインについて、ご一緒に見ていきます。
ケース1:ピアノのAさん

教室では優等生でした
Aさんは、小学3年生の女の子でした。
ピアノを習い始めてから、発表会でも落ち着いて弾ける、いわゆる優等生タイプのお子さんです。
担任の私から見ても、真面目で丁寧な子でした。
その子が、ある時期からレッスンの前になると表情を曇らせるようになりました。
朝の支度が遅くなって
変化は、練習そのものより先に、生活のリズムに出ました。
レッスンのある水曜だけ、朝の支度がやけに遅くなる。
連絡帳にも、お母さまが
「なんとなく元気がない」
と書いてこられました。
ご家庭では、思いきって一度だけレッスンを休ませる選択をされました。
休ませて見えたこと
休んだ日、Aさんはようやく本音を話したそうです。
「上手な子と比べられるのがこわい」
それが、行き渋りの正体でした。
その後は先生とも様子を共有し、Aさんは自分のペースで続けられるようになりました。
ケース2:スイミングのBくん

進級テストが続いて
Bくんは、小学5年生の男の子でした。
スイミングに通い、進級テストのたびに合格を重ねてきたお子さんです。
ところが、ある級で足踏みが続いた時期がありました。
「疲れた」が増えた頃
Bくんの口ぐせが、少しずつ変わっていきました。
「今日はなんか疲れた」
そう言って、通う前にソファから動かない日が増えたそうです。
ご家庭では、やめさせるのではなく、通う曜日を変える選択をされました。
曜日を変えたあと
混み合う曜日から、少人数の曜日へ。
それだけで、Bくんのプールへの足取りは軽くなりました。
数年後、中学で水泳部を選んだと、お母さまから便りが届きました。
ケース3:英会話のCさん

得意なはずの英語で
Cさんは、中学1年生の女の子でした。
英会話教室に長く通い、発音をほめられることも多いお子さんです。
その得意なはずの英語で、教室に行きたがらなくなりました。
教室の空気が変わって
きっかけは、クラス替えでした。
仲のよかったお友だちが、別の時間帯へ移ってしまったのです。
ご家庭では、すぐに結論を出さず、しばらく様子を見る選択をされました。
そのうえで、Cさん自身に続けるかどうかを尋ねられました。
数年後に話してくれたこと
Cさんは、少し考えて
「続けたい」
と答えたそうです。
自分で決めたことが、通い続ける支えになりました。
高校生になったいま、英語を武器に留学を考えていると聞きます。
3人に共通したサイン
レッスンの話題が消えていた
3人には、やめたいと口にする前の共通点がありました。
それは、家庭でレッスンの話題を口にしなくなることです。
楽しいとき、子どもは聞かれなくても話します。
その語りが止まったとき、心の中では何かが動き始めています。
データから見える背景
現場で見てきた感覚では、行き渋りは突然ではなく、静かに始まります。
これは学校生活にも通じる話です。
データを見ると、小学生の不登校は増加が続き、直近の調査では過去最多を更新しています。
(出典:文部科学省
「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1302902.htm)
背景の多くは、はっきりした理由ではなく、小さな違和感の積み重ねだと言われています。
習い事の行き渋りも、同じ入り口を持っているように思います。
3人が教えてくれたこと

3人のお子さんは、環境も習い事も違いました。
それでも、言葉になる前のサインはよく似ていました。
- 「やめたい」の前に、家庭での語りが減る
- 原因より先に、生活リズムや口ぐせに表れる
- 休ませる・変える・待つ、選択肢は一つではない
言葉になる前のサインに気づく視点を持っておくと、あわてずに次の一手を選べます。
観察 → 小さな選択 → 見守り、この順番を心の隅に置いてみてください。