「習い事をお休みするべきか、それとも初の中間テストに集中させるべきか…」
連休明けの月曜日、お子さんの背中を見送りながら、そんなふうに揺れていらっしゃいませんか。
私は元小学校教員として現場に立ったあと、教育系出版社で編集者として勤務してきた、教育系のライターです。
今回は中学生になって初めて迎える中間テストと、いわゆる5月病が重なる時期の習い事の悩みを、ご一緒に見ていきましょう。
中1の5月、データが示すこと

不登校は時期的な偏りがある
文部科学省が毎年公表している
「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」
では、不登校児童生徒数や、その背景にある要因の全国的な傾向がまとめられています。
調査の概要は、文部科学省の公式ページでご覧いただけます。
(出典:文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1302902.htm)
公表されているデータの中では、不登校の要因として
「無気力・不安」
が大きな割合を占めることや、中学校段階で出現が増えていくことが、繰り返し報告されてきました。
連休明けから初夏にかけては、いわゆる5月病と呼ばれる時期と重なります。
新しい生活リズムへの適応疲れが出やすいタイミングだと、教員時代にも肌で感じてきました。
中学校ではそれが初の中間テスト前と重なるため、より複雑な揺らぎになります。
つまり
「なんとなく不調」
は気のせいではなく、構造的に起こりやすい時期であるとも言えます。
テスト前、生活リズムが崩れる
中1の5月後半は、入学・部活動・新しい友人関係の調整が一段落し、家庭学習の比重が一気に上がる時期です。
出版社時代に担当した中学生の生活時間に関する記事の中でも、5月後半は
「勉強時間が増える一方で、睡眠時間が縮みやすい」
という傾向が、たびたび話題に上がっていました。
つまり、勉強・部活・習い事・睡眠の四角形のどこかが、必ず細くなっていきます。
中1の5月は、このバランスがもっとも崩れやすいタイミングだと感じています。
取材:松井先生が見た中1の5月

「原因を一つに絞れないことが、何より苦しい」
先月、中学校で長く学級担任をしてきた元同僚の松井先生に、中1の5月の様子について話を聞きました。
松井先生は迷いなく、こう言っていました。
「中1の5月は、本人も親御さんも、原因を一つに絞れないことが何より苦しい」
中1の5月に出てくる不調は、たいてい一つの原因から来ているわけではありません。
- 新しい時間割への疲れ
- 初の中間テストへの不安
- 部活の練習量
- 友人関係の組み替え
- 睡眠時間の縮み
こうした要素が少しずつ重なって、子どもの表情を曇らせていきます。
それでも親御さんとしては
「どれが一番の原因か」
を突き止めたくなります。
原因さえ分かれば、対処できる気がするからです。
しかし、原因が一つに絞れないからこそ、対処も一つの行動では足りません。
「習い事をやめれば解決する」
「勉強時間を増やせば取り戻せる」
という単純な打ち手は、中1の5月にはあまり効かない、ということになります。
支えになる子、重荷になる子
松井先生によると、習い事が支えになっている子は、レッスン後にすっきりリセットできた表情で帰ってくるそうです。
反対に、重荷になっている子は、レッスン中もスマホで成績アプリを気にしている、といいます。
つまり、見るべきは
「続けるか・やめるか」
ではなく、レッスン後の表情と切り替え方になります。
これは、料理の味を見るのに似ているかもしれません。
レシピだけでは判断できず、食べてみたあとの表情で決まる、というところに近いのだと思います。
やめる前に、頻度を動かす
松井先生が印象的に話してくれたのは、5月の終わりに駆け込みでやめてしまった生徒の多くが、夏休み明けに
「やっぱり続けたかった」
とこぼす、という話でした。
決定そのものより、決め方の余裕が、後の納得感を左右するのかもしれません。
頻度や曜日を一度ずらしてみる、という選択肢は、案外見落とされがちです。
正直、私もまだここに完璧な答えは出ていません。
それでも
「続けるか・やめるか」
の前に
「どう調整するか」
を試してみる価値は、大いにあると感じています。
揺れる子の3つの共通サイン

サイン①時間が足りないと訴える子
教員時代、高学年の担任をしていた頃、学習量が一段増える時期になると、こんな言葉を口にする子が必ずいました。
「やめたいわけじゃないけど、もう何かをやめないと回らない」
中1の5月にも、ほぼ同じ言葉が現れます。
観察していると、この子たちは時間配分の問題というより
「自分でやりくりした感覚」
を持てていない場合が多いのです。
つまり足りないのは時間ではなく
「自分で決めた実感」
だと考えてよいでしょう。
サイン②急に習い事を渋る子
教員時代、ピアノを楽しみにしていたしおりちゃん(仮名)が、突然ピアノに行きたがらなくなったことがありました。
原因はピアノではなく、算数の単元テストの成績下落でした。
子どもは、自分が落ち込んでいる本当の理由を、まだ言葉にすることができません。
そのため、目の前の習い事のせいに見えても、その奥にある別の不安をまずは聞くことが大切になります。
サイン③点数が乱高下する子
担任していた頃の感覚で言うと、点数が乱高下する子の多くは
「家での予定の見える化」
が弱い傾向にありました。
カレンダーやホワイトボードに、習い事と勉強の時間がきちんと書き込まれていない。
すると頭の中で常に
「あれもこれも」
と漠然と気にしてしまい、集中力が分散します。
とはいえ、これがすべてのご家庭に当てはまるとは限りません。
性格の影響も大きい部分です。
やめる・続けるの二択をほどく

「生活の再構築期」の負荷
中1の5月の揺れは、習い事のせいでも、勉強のせいでもありません。
本質は
「生活全体を組み替えている最中である」
という構造的な理由にあります。
登校時間、部活、宿題、習い事、睡眠、友人関係。
その全部が、4月から5月にかけて一気に再配置されます。
教員時代の感覚では、この再構築期に大人が決めてあげすぎると、子どもは自分でリズムを作る練習をする機会を失ってしまいます。
逆に、放っておきすぎると、初の中間テストで一度大きく崩れる流れになりがちです。
頻度を動かす、という発想
ここまでを眺めていくと、本当に問われているのは
「やめるか続けるか」
ではない、と見えてきます。
問うべきは、今の習い事の頻度と時間配分が、お子さんの再構築期に合っているか、のほうです。
編集者時代に記事を作る中で出会ったご家庭の話でも、頻度を週2 → 週1に一時的に落としたり、練習日を平日から土曜に動かすなど、やめずに調整した例が増えていました。
もちろん、すべての家庭が同じやり方で解決するとは限りません。
それでも、いきなり全部をやめてしまう前に、組み替える余地はかなり残されているように思います。
親御さんへの3つの問い

中1の5月は、習い事と勉強が初めて本気でぶつかる時期です。
そのぶつかりは、お子さんが自分の生活を組み立てる練習をしている、大切な瞬間でもあります。
- レッスン後のお子さんの表情は、すっきりリセットされていますか
- 「やめる・続ける」より先に、頻度や時間帯の調整を試しましたか
- お子さん自身が「自分でリズムを決めた」という実感を持てていますか
結論を急がず、まずはこの3つを家族で眺めてみてください。
判断は、そのあとでまったく遅くありません。