「お母さん、ちょっと話あるんだけど」
夕飯の後、リビングで次男にそう切り出されたとき、私はすぐに身構えました。
たぶん、またやめたいが始まるんだ。
こんにちは、えりこです。
中学生と小学生、2人の男の子を育てる母です。普段は会社勤めをしながら、子どもたちの習い事には毎週のように一喜一憂しています。
今日は、てっきりやめたいだと思っていた次男のひと言が、まったく違うものだった話を、家庭で起きたままお伝えします。
プログラミング教室から帰ってきた火曜の夜

先週の火曜日の夜、9時前のことです。
次男は4月からプログラミング教室に通い始めて、もう2か月ほどになります。
幼稚園のサッカーも、低学年の空手も、3年生の体操も、3か月続けばいいほうでした。
だから今回も、内心でいつまで続くかなと、半分諦めていた自分がいました。
その日、教室から帰ってきた次男の様子が、いつもと少し違いました。
玄関でただいまを言ったあと、靴をきれいにそろえて、何も言わずに自分の部屋に上がっていったのです。
普段なら、ただいまの後すぐ冷蔵庫を開ける子が、です。
夕飯のあと、片付けをしていた私のところに、次男がそっと近づいてきました。
「お母さん、ちょっと話あるんだけど」
その口調で、私はピンときたつもりでした。
ああ、また始まるんだ、と。
過去にスイミングのときも、英会話のときも、同じような切り出しからもう無理が続いたからです。
私はお皿を置いて、椅子に座って、ふうっと一度息を吐きました。
覚悟を決めて、次男のほうを向きました。
「やめたい」じゃなく「変えたい」だった

次男は、テーブルの木目をじっと見ながら、ぽつぽつと話し始めました。
「あのさ、今のプログラミング教室、変えたいんだ」
私は一瞬、聞き間違えたのかと思いました。
「やめたい」
ではなく
「変えたい」
その2文字の違いに、頭が追いつくのに数秒かかりました。
続けて次男は、こんなことを話してくれました。
「今のとこ、Scratchばっかりで、もうちょっとちゃんとプログラミングをしてみたい」
友達のお兄ちゃんが通っている別の教室では、本格的なプログラミングを小学生から教えているらしい。
体験会だけでも行ってみたい、と次男は言いました。
私の口からは、すぐに言葉が出ませんでした。
これまで次男は、もう無理、行きたくない、楽しくない、そんな言葉ばかりを繰り返してきた子です。
それが初めて、もっとこうしたいという方向で口を開いた瞬間でした。
私はとっさに、こう返してしまいそうになりました。
「せっかく続いているのに、もったいないでしょ」
でも、口に出す前にぐっと飲み込みました。
あの日のタマネギの後悔が、頭の片隅をよぎったからです。
代わりに私が聞き返したのは、たった一言でした。
「いつ体験行きたい?」
次男はちょっと驚いた顔をして、こう聞き返してきました。
「えっ、いいの?」
その表情が、なんだかとても、子どもらしくて愛おしかったのを覚えています。
子どもの言葉を、最後まで聞くということ

やめたいと変えたいは、ひらがなにすればたった2文字の違いです。
でも、子どもの中で起きていることは、まったく別のことだと、あの夜に教わりました。
「やめたい」
は、その場から離れたい気持ち。
「変えたい」
は、もっとよくなりたい気持ち。
親の私がどうせまたと先回りしてしまったら、その違いを聞き分けることはできなかったと思います。
あの日もし、椅子に座る前に、こう返していたら。
「またそれ?」
次男は途中で口を閉じていたかもしれません。
そして、自分から動こうとした小さな芽は、そのまま枯れていたかもしれない。
そう思うと、今でも少し怖くなります。
同じように、お子さんが話あるんだけどと切り出してきたとき、つい身構えてしまうお母さま・お父さまへ。
もしかしたら、その先の言葉は、こちらが思っているのとはまったく違うかもしれません。
- 「またか」と思っても、まずはテーブルに座って最後まで聞く
- やめたいと変えたいは別の言葉として受け止める
- 体験や見学で動ける道があるなら、まず一歩試してみる
次男は今、新しい教室の体験会の日を、カレンダーに自分で書き込みました。
体験して合わなかったら、また話そうね、とだけ伝えてあります。
結果がどうなるかは、まだ分かりません。
それでも、自分から変えたいと言えた次男の小さな勇気を、私は親として大切にしたいと思っています。