「うちの子にも合うかな?」と習い事を迷っている方へ。
習い事の実体験を通して見えたこと・感じたことを、息子さんたちが習った剣道の経験からリアルに語っていただきました。
レギュラー獲得のチャンス
前回、道場の事情により長男にスポットが当たることになったお話を綴りました。
スポーツに限ったことではありませんが、何かをきっかけに急に自分が主役になることは往々にしてあります。
長男の人生の分岐点は小学5年生であったのかもしれません。
そこで、今回はその分岐点でどのような選択をしたのかを綴りたいと思います。
レギュラーを経験
明らかに弱小選手ではありましたが、主力選手2名の欠員により、急遽長男がレギュラー候補となりました。
それまでは、練習試合における戦績も9対1の割合で負けが込んでおり、とても公式戦で活躍できるような状態ではありませんでした。
しかし、この道場では週7回の稽古以外に指導者がマンツーマンで指導をされる秘密の場所があり、長男はこの場所でみるみる力をつけていったのです。
保護者も入ることが禁じられていたため、長男に秘密の場所の様子を聞いたこともありますが、口を閉ざすだけでした。
何がどのように行われていたのかは分からないままでしたが、小学6年生になる寸前には、練習試合の戦績も1対9の割合で負けがほとんどなくなるまでに成長しました。
そして、春には新人戦に出場することになったのです。
この試合は3位入賞となり、公式戦のデビューでいきなり入賞したことにより長男も自信がついたようです。
ステータスは原動力
デビュー戦を入賞で飾った長男は、日々の稽古に取り組む姿勢が変わりました。
それまでは、辛い稽古から逃げる気持ちが強く、また普段の生活のなかにおいても困難から逃げる癖がありました。
しかし、目の前の壁から逃げずに進むようになり、生活の姿勢や剣道に対する情熱が体からにじみ出ているようでした。
私は、このときまで人間とは少しずつ変わっていくものだと考えておりましたが、長男の変化のスピードをそばで見たことにより、人間の成長は突然訪れるものなのだと感じました。
当然、すべてが完璧な人間などいるはずもありませんが、「大変」なことを経験すると「大きく変わる」のだと過去に聞いたことのある名言を思い出しました。
また、自信のなかった長男が試合に出場し入賞したという結果をステータスととらえ、その後の原動力になったのだと思います。
次々と訪れる落とし穴
とは言え、人生はそこまで順調に進むものではありません。
ましてや少年剣道であったとしても武道には変わりありませんので、簡単に自分の居場所を作ることができるものではなかったのです。
部内戦ではいつも最下位にいた長男のモチベーションが高くなったことを悪く思う人間もたくさん現れ出しました。
特に上級生は自分たちのシーズンが終わり、指導者の気持ちが次の学年に向いていることを良く思わず、長男にあらゆるトラップを仕掛けてきました。
無視をされるくらいなら可愛らしいもので、時には稽古中に長男の竹刀や防具が無くなったり、長男が加害者であるかのように架空の事件を作られたりと次々に問題が起こりました。
当の長男は
「自分は悪いことをしていない」
とどこ吹く風でしたが、私や夫は他の保護者から何度も呼び出され、謝罪を要求されるなど神経がすりへる一方でした。
実はこのような事象は強豪道場ではありがちなことなのですが、剣道未経験者の私たちにとっては初めて知る現実でした。
シーズンを前に退部をされた2家族も、おそらく私たちがはめられた次々と訪れる落とし穴に耐えられなかったのかもしれません。
落とし穴を回避する方法はたった一つ
稽古時には、ほぼ毎回先輩の保護者に呼び出され、文句を言われたり謝罪を要求されるようになり、感覚がマヒしておりましたが、ある時気付いたのです。
こちらが無神経な振る舞いを続けていけば、相手も虐めにくくなるのではないかと。
そうして、徐々に振る舞いを変えていきました。
何を言われても「無」となり、相手が折れるまで表情を変えることがないよう心をなくす選択をしたのです。
私たち両親のこの態度に腹を立てて長男に対する虐めが強まった時期もありましたが、相変わらず長男は剣道に集中していたため道場内も少しずつ空気感が変わっていきました。
今考えると私たちもすでに神経が崩壊しており、長男の頑張りだけが心の支えになっていたのです。
しかし、この方法は決して勧められるものではありません。
子どもの応援は、親の心に血が通ってこそ結果につながるものであると後に気付くことになります。
正式にレギュラー決定
そして、長男は全国大会の予選会のメンバーに選ばれることになりました。
もちろん、実力が少し上がったとはいえ、まだまだ県内で結果を出せるほどのものではありませんでした。
相変わらず横やりも入り、安定した精神状態ではありませんでしたが、選ばれたからには結果を出すしかありません。
また、長男が選ばれたことにより悔しい思いをした子どもたちがいたことも事実です。
その子どもたちのためにも全力を尽くすしかありませんでした。
**豆知識**
「ガッツポーズは禁止」
剣道では勝利をした後、ガッツポーズをすることが禁止されています。
様々な理由があげられますが、武道である以上、相手に対して無礼な態度とみなされるためです。
全日本剣道連盟の理念のなかに
「相手の人格を尊重し、心豊かな人間の育成のために礼法を重んずる指導に努める」
とあり、ともに稽古や試合に励む仲間を尊重するために禁止とされています。